ジュノーの機体と観測装置について

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オリジナルURL(英文):Juno Spacecraft and Instruments

NASAの探査機ジュノーは、2011年8月5日にフロリダ州ケープカナベラルからアトラスV-551ロケットで打ち上げられ、2016年7月に木星に到達する予定です。探査機ジュノーは木星の雲の上空3,100マイル(5,000キロ)を約1年間で32回周回する予定です。

ジュノーは、回転式の太陽電池によるパワーで稼働し、木星の強い放射能の領域を避けるために、高緯度の極軌道で木星を周回します。個々の測定装置の設計は既存技術のまま使うことができるため、今回のミッションのために何か新たに開発する必要はありませんでした。

ジュノー探査機の図(画像クリックで拡大表示します)
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Juno spacecraft and its science instruments. Image credit: NASA/JPL

ジュノーには以下の科学計測装置が搭載されています:

Gravity Science: 重力測定実験
MWR:マイクロ波放射計
MAG:磁力計
JADE:オーロラ分布観測実験システム
JEDI:エネルギー粒子検出装置
Waves:電波/プラズマ波観測装置
UVS:紫外線撮像スペクトロメーター
JIRAM:赤外線オーロラマッピング装置

探査機はJunoCam:ジュノーカメラと呼ばれるカラーカメラも搭載しているので、木星の極地の詳細な写真を初めてみることができることでしょう。

探査機の回転について

ジュノーにとって、NASAの初期の探査機であるパイオニアのように、回転させることで航海姿勢が安定し、制御しやすくなるのです。打ち上げ後、太陽電池の展開をする前に、第2段のロケットブースターに取り付けられていたロケットモーターで回転を始めました。木星の軌道上にいる間は、1回転につき1度、宇宙空間から木星の観測地点の観測をします。毎分3回転していますので、2時間に約400回木星の極から極まで観測することができます。

太陽電池について

木星の軌道は、地球と太陽の距離の5倍もあるので、太陽光を受けるのは25分の1です。ジュノーはこのように太陽から遠く離れた場所でも機能するように設計された、NASAの初めての太陽電池による探査機になります。従って十分な発電ができるように太陽電池パネルの表面積はとても大きくなっています。ジュノーの6角形の本体から外側に伸びた3つの太陽電池のパネルの長さは約66フィート(20メートル)にも及びます。太陽電池は地球スイング・バイの際のほんの数分間を除き、ミッションの最初から最後まで太陽光を受けて発電を続けます。太陽電池パネルは、打ち上げ前はロケットの筐体に格納できるように、4つに折り曲げてありました。

ジュノーにとって都合の良いことに、技術の進歩により20年前に宇宙で使用されていたシリコンの太陽電池のセルより、効率も、放射線耐力も50%も向上しています。今回のミッションでの電力使用量はそれほどでもありません。搭載している計測機器が最大電力を使用するのは、(木星に最接近している期間の)11日間の軌道周回中で、毎日6時間程度です。ミッションの設計にあたり、木星による日食を防ぎ、放射線によるダメージを最小限に抑え、太陽電池のパネルがきちんと太陽に向くように科学的な計算を加えた結果、太陽電池による発電こそがジュノーに最適な電力システムとなりえたのです。

電子機器の保護について

ジュノーは木星の強い放射線を避けるために、北極の方向に近づき、木星の放射能ベルト(地球のヴァン・アレン帯のような放射能ベルト)の下側に出るまで高度を下げて、そしてその後は南方から出ます。ジュノーは、搭載している敏感な電子機器を保護するために、強力な放射線の環境の中でも観測を継続できるようにするために、電子機器の保護筐体を備えています。このミッションの特徴として、地球での低空域における安全な環境を越えた、宇宙空間における過酷な放射線の環境においても宇宙探査活動ができるように保護できるようにするというNASAのビジョンに関連したものなのです。


(訳者注)

ヴァンアレン帯とは(Wiki)

ヴァン・アレン帯(ヴァン・アレンたい、英: Van Allen radiation belt)とは、地球の磁場にとらえられた、陽子、電子からなる放射線帯。

1958年にアメリカ合衆国が人工衛星エクスプローラー1号を打ち上げ、衛星に搭載されたガイガーカウンターの観測結果より発見された。名称は発見者であるアメリカの物理学者、ジェームズ・ヴァン・アレンに由来する。

概要

ヴァン・アレン帯は地球を360度ドーナツ状にとりまいており、内帯と外帯との二層構造になっている。赤道付近が最も層が厚く、極軸付近は層が極めて薄い。内帯は赤道上高度2,000~5,000kmに位置する比較的小さな帯で、陽子が多い。外帯は10,000~20,000kmに位置する大きな帯で、電子が多い。

ヴァン・アレン帯の起源と地球

太陽風や宇宙線からの粒子が地球の磁場に捕らわれて形成されると考えられている。電子は太陽が起源、陽子は宇宙線が起源とされている。地磁気の磁力線沿いに南北に運動しており、北極や南極では磁力線の出入り口であるため粒子も大気中に入ってきて、これが大気と相互作用を引き起こすことによってオーロラが発生する。オーロラはヴァン・アレン帯の粒子が原因であるため太陽活動が盛んなときは極地方以外でも観測されることがある。地球以外にも磁場を持つ惑星である木星、土星で存在が確認されている。

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